Concept
暮らしの実験場
人と自然の境界がうすれ、「文明的自然」が地表を覆うようになって私たちは自然を失念していました。
それが昨今の激甚災害らによって私達は今いちど自然との関係を問いただされています。
「TŌGE」はそうしたなか、都心から程ない移動距離にあり、人工林と原野林が混在する軽井沢の森のなかで、「人・自然・人工物」がおり混ざった暮らしを探求します。
暮らしを「食」「育」「住」に分解し、フードプロダクトの開発(食)や、自然教育プログラム(育)、アーティストインレジデンス(住)など、様々なプロジェクトを企画・実行しています。
地理・背景
「離山」は長野県軽井沢町に位置する山で、その形がなだらかであることから「テーブルマウンテン」とも呼ばれ、親しまれている。江戸時代には「沓掛」の名称で宿場町として栄え、近代化以降は避暑地のイメージが強い軽井沢だが、近年は観光客や移住者の増加などにより、町として新たなフェーズを迎えています。
「TŌGE」のベースとなる活動は、この「離山」における戦後に人工的に作られたカラマツ林を切り開き、土地の野草や他の植生を再生していく計画より始まりました。
間伐を長年にわたって続けると、光の入りかたが変わり、見たことのない花が出現したり、虫や鳥が増えたり多様化したりと、生態系の変化を目の当たりにすることができます。日本は森林が豊かな土地柄と言われています。しかし、植林などの影響で人工的な側面が強い日本の森林は、他の自然現象と同様に、決してスタティックな存在ではなく、独自のサイクルで新陳代謝をしています。
この体験に着想を得て、「TŌGE」ではそのサイクルを学びながら、様々な文化・創作活動を通じて、日常生活への問いを投げかける仕掛けとしています。
TŌGE(峠)の由来
軽井沢の離山の西の麓は昔、「沓掛」という名の宿場町でした。軽井沢へのアクセスポイントとして有名な碓氷峠は、江戸時代に中山道における要所でした。
その昔、旅人などが道中の安全を祈願して、峠を登る前に草鞋や馬沓の類を履き替え、古い沓(くつ)を山の神様に備えることが行われていたことから、「沓掛」と呼ばれるようになりました。
これをもとに、「人生の転機や社会課題、日常課題など、日々おしよせてくる『峠』を越える準備や、学びを得られる場」にする想いを込めました。
EATING
食
味知らぬ森を究める。
普段食べなれているものから距離を置き、森の中で遊び、探索し、研究しながら、食の新たな可能性を探ります。自然の恵みを使ったフードプロダクトの開発や、森の中での食イベントなども開催しながら、自然の中で、を再考します。
EDUCATION
育
山を育てる。心を育てる。
山の植生を観察し、手を入れるたり、育てることから学ぶこと非常に多いです。希少になってしまった軽井沢原生の植生を保護し、育てるナーサリーや、森林の生物の多様性を身近に体感できる散策路をつくり、子供から大人まで自然の中で学べるワークショップなども開催します。
LIVING
住
暮らしを作品化する。
ジャンルにとらわれない、様々なアーティストを各地から呼び寄せ、TŌGEにて滞在制作をおこなってもらうことで、彼/彼女ら独自の視線を介し、日常への問いのきっかけとなるような作品の共有をします。
STERRING STRUCTURE
運営体制
TŌGEは一般社団法人芸術文化離山(2021年2月設立)により企画・運営されています。
上野有里紗(うえの・ありさ)
代表理事 / 建築家
都市文化を批評的にとらえなおしつつ、建築的介入を創り出す活動をしている建築設計事務所ULTRA STUDIO 共同主宰。Goldsmiths, University of London にて視覚文化論学首席卒業後、2010年から12年にかけてロンドンのオルタナティブスペースに展覧会企画に携わる。AA School、Royal College of Art にて建築修士号取得。ロンドン・東京の設計事務所勤務を経て、現職。
立石従寛(たていし・じゅかん)
代表理事 / アーティスティックディレクター
自然と人工など相対する境界の合成をテーマに活動する現代アーティスト業の一貫として、TŌGEの立ち上げ・運営に携わる。ディープエコロジーやノンヒューマン、マルチスピーシーズ人類学などの環境哲学を基に、木を食べるブランド「木(食)人」など、人の手を加えることによって自然を立て直すプロジェクトを企画・実行する。英国Royal College of Art美術修士号修了(論文首席)。
上野由美子(うえの・ゆみこ)
代表理事
古代オリエント、エジプトのガラス研究家。
1994 年~ 2003 年シルクロード研究所 ( 鎌 倉 ) にて活動、1999 年~ ARTP ( アマルナ・ ロイヤル・トゥーム・プロジェクト / ニ王家 の谷発掘プロジェクトに参加。近年は考古学 以外の文化事業にも携わっており、現在、一 般社団法人 日本南東欧経済交流協会業務執行 理事。
PROJECTS MEMBER
プロジェクトメンバー
瀬戸山七海(せとやま・ななみ)
森林素材開発PJリーダー
マテリアルとしての森林資源という考え方をベースに、新規素材の開発を行う。岐阜県高山市に生まれ育ち、山に対しての固定資産税をきっかけに森林資源の活用に対する問題意識を持ちTŌGEに参加。旧株式会社XSHELLのファウンダーでもありベンチャー起業家としての活動も行っている。
黒沢聖覇(くろさわ・せいは)
リサーチャー
キュレーター・アーティスト。エコロジーの概念に即したキュレーションの実践に基づく現代アートの方法論を研究。キュレーション、作品、テキストを通して、複雑なエコロジーを感覚的・叙情的に観客へ伝えることを目指す。東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科後期博士課程在籍。Photo: Beeative Team
COLLABORATERS
コラボレーター
軽井沢を拠点に全国で活動するガーデナー・ランドスケープデザイナー集団。自然を模倣したスタイルで、原在来植物やその地域で手に入る資材を使い、自然が向かいたい方向を観察しながら景観をデザインする。これによって自然景観を豊かにし、その守り人となることを目指す。
「やさしさ」がめぐる経済の実現を目指すデザイン・ファーム。デザインコンサルティングや投資事業などを通じて、企業のカルチャーをつくり、それを体現するプロダクトやサービスを生み出すことで、人や社会や地球に愛される会社をデザインしている。
ポール・スミザーを中心にしたランドスケープ・デザイン事務所。ガーデンをもう一つの居住空間としてとらえ、植物とともに生活する純粋な喜びを多くの人に共有するデザイン・コンサルテイングを行う。